白衣高血圧で薬が増える!?
外来看護師 湯本 登紀
外来で診察前に血圧測定をお願いすると、いつも以上の値を示すことがあります。「いつもはこんなに高くはないのに!」、とポケットに数枚の測定結果用紙を忍ばせ、何度も測り直している患者さんを多く見ます。でもそれ器械の異常ではありませんよ(笑)。
不安や緊張など精神的ストレスを受けると、交感神経が刺激され血圧が上がります。医師や看護師が直接測定しても、同じように血圧が高くなる患者さんは「診察室の血圧が高い」ということで、「白衣高血圧」と呼ばれています。
家庭血圧測定のメリット
自宅で測った血圧を「家庭血圧」と呼びます。診察室で測った血圧は、必ずしも普段の血圧を反映しません。診察室での血圧が高い患者さんには、普段から高いのかどうかを確認しています。すると
① 家には血圧計がない
② 血圧計はあるけど 測ったことがない
③ 病院に急いで来て、すぐに測ったから高くなった
と、いう答えが返ってきます。またいつもと異なる血圧の値に、「こんなに高いけど大丈夫かな?」と不安になり、何度も測りなおす方もいます。
病院での血圧の値だけで「高血圧」と診断されると、血圧を下げる薬が増えたり、追加の検査をすすめられることもありますよ。そこで、普段の落ち着いた状態での血圧を医師に知らせるために「家庭血圧」が大事になります。また白衣高血圧の方は、その後に高血圧症に移行する可能性があるとも言われています。家庭血圧を上手に用いることで、高血圧による病態を早く、正確に診断することや、治療の効果をより知ることができます。
血圧の正しい測り方
朝と夜の1日2回、座わった状態で測定します。動いた直後には測らず、座って1-2分間の安静を保ってから測るようにして下さい。血圧の値と脈拍数は、忘れず血圧手帳などに記録しておきましょう。また、朝・夜以外にも、職場やその他の活動で血圧が高くなる場合があります。仕事中やストレスの多いときなども血圧を測って、血圧が変動していないかを確認してください。日本高血圧学会では家庭血圧測定を推奨しています。
血圧計について教えて!
家庭で使う血圧計と病院で使う血圧計では、見た目も使い方も異なります。血圧計には、「自動電子血圧計」、「水銀血圧計」、「アネロイド血圧計」の3種類に大きく分けられます。
家庭での血圧測定に使われるのは、主に「自動電子血圧計」です。一方、病院や診療所などで医療スタッフが血圧を測定する際は、「水銀血圧計」「アネロイド血圧計」が使われます。2013年10月に「水銀に関する水俣条約」で、地球的規模の水銀汚染の防止を目指すこととなり、2015年に「水銀汚染防止法」が国会で成立したため、2021年1月から水銀を使った機器の製造ならびに輸出入が原則として禁止されました。現在の水銀血圧計は継続使用可能ですが、水銀の蒸発や不純物の混入、部品の劣化などが生じる可能性があり、定期的なメンテナンスを行うことと、新規に水銀血圧計の導入を行わないことが推奨されています。
水銀血圧計は水銀の高さで、またアネロイド血圧計は文字盤と針で圧力を示します。聴診器を使って「コロトコフ音」という、血管にかけた圧力が減ったときに聞こえる血管音を聴きながら測定します。
家庭で血圧測定を行う場合、聴診器を必要とする水銀血圧計やアネロイド血圧計を使うのは困難です。自動電子血圧計は、腕や手首などに袋状のベルト(カフ)を巻けば、あとはボタン一つで自動的に測定してくれるため便利です。また血圧だけでなく脈拍も同時に測定できます。
自動電子血圧計には「上腕式」、「手首式」、「指式」の3種類があります。日本高血圧学会は、家庭用の血圧計として、指式血圧計は不正確としています。また、手首式血圧計も血管の圧迫が困難であることなどの理由で不正確になることが多く、上腕式血圧計の使用を推奨しています。
軽い高血圧症なら、体重を減らすだけでコントロールできるかもしれません。高血圧は心臓病、脳卒中、腎臓病などのリスクを増やすので、日頃からの健康管理をしていきましょう。看護師のわたしも病院受診の時はとても緊張します。悪い結果のことしか考えられなくなり、普段は低めの血圧も高くなり、脈も速くなります。それだけの値で薬が追加になるのは避けたいですね。これまでは週に3・4日、1時間位のウォ-キングをしていましたが、冬になるので何を取り入れていくか検討中です。