心リハって何?
理学療法士 / 心不全療養指導士 井上 拓也
「リハビリテーション」と聞くと、脳卒中や骨折して歩けなくなった患者さんが、平行棒や杖を使って頑張って歩くシーンを思い浮かべるのではないでしょうか。
「リハビリ」と略されますが、その言葉はラテン語のre (再び) + habilis (適した・ふさわしい) に由来しています。
略して「心リハ」
近年、心臓の病棟では「心臓リハビリテーション」、略して「心リハ」という専門のリハビリが行われています。心リハは失った物を取り戻す一般的なリハビリではなく、ましてや、胸をたくさん叩いて心臓を鍛えるようなものでもありません(笑)。
また「心リハ」と略すと、こころのケアと勘違いされることもしばしばあります。心リハとは、心不全や狭心症といった心臓病の患者さんに、どのくらいまで負荷をかけるとその症状が出てくるかを評価したり、心臓の手術後に、一時的に体力が落ちてしまった患者さんに、運動や生活指導を通して早期に日常生活に戻る手助けを行うものです。一般的に運動は体力や筋力のアップを目的としますが、心リハの運動は心臓の機能の改善や心臓病の再発予防に効果があります。
筋力は回復するのに時間がかかる!
当院では多くの患者さんが手術の翌日から心リハを開始します。「理学療法士」というリハビリ専門スタッフがベッドサイドを訪れ、約2週間の入院中毎日、退院の前日までもリハビリを施します。
ひと昔前は、術後できるだけ安静を保ち、状態が落ち着いてから身体を動かしていくのが主流でした。しかし、長い安静は足の血管に血栓ができやすくなったり(エコノミークラス症候群)、痰がうまく出せず肺炎を併発したり、全身の筋力が落ちてしまったりと合併症のリスクが高くなることがわかりました。1日安静にしていることで筋力は 1~4%、1~2 週間で20% も筋力が落ちると言われています。さらに、その落ちてしまった筋力を戻すには、約 6 週間もかかるのです。そこで近年は、安静にする時間を極力短くする「早期離床」という考えに変わってきました。
充実したスタッフの数
当院には、約60名のリハビリテーションスタッフが在籍しています。これは急性期病院としては「十勝で一番」です。また、土日祝日にも関わらず、365日スタッフがローテーションを組んで働いているため、週の後半に心臓手術を行っても、土日も引き続きリハビリテーションが可能です。リハビリテーションスタッフは心臓だけでなく、整形外科や脳神経外科などの他疾患の患者を受け持つこともあるため、患者さんの状態を総合的に観察することが出来ます。
心臓の手術と聞くと、大きな不安を覚えると思います。特に痛みに対する不安は強いのではないでしょうか。しかし筋肉を切ることが少ない心臓の手術は、術後早期から痛み止め(鎮痛剤)の内服でコントロールがつくことがほとんどです。痛み止めを飲むことを我慢せず、痛みを和らげて早く身体を動かす方が、早期の回復につながります。
手術後はリハビリスタッフと共に頑張っていきましょう!