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病気について

「むくみ」を治す~圧迫療法のすゝめ~

2021年10月13日

医師 大友 有理恵

 日常生活でよく耳にする「むくみ」
足が太くなって靴下が強く食い込む。すねを押してみるとムニュッとへこみ、指の痕がしばらく残る。誰もがそんな経験があるのではないでしょうか。

「むくみ」とはいったい何なのでしょう?
今回は「むくみ」についてお話しさせていただきます。

むくみの原因

 人のからだは約60%が水分です。水は1Lが1kgのため、50kgの人であれば30kgが水分ということになります。60%の水分のうちの2/3が細胞の中に、1/3が細胞以外の場所に存在します。細胞以外とは血液リンパ液細胞間質液のことをいい、細胞間質液とは血管と細胞の間の水分のことをいいます。

 からだでは、血液と細胞との間で水分の出し入れと、細胞から血液へ老廃物の排出が常に行われています。むくみとはこのバランスが崩れ、細胞間質液に水分が多くたまってしまうことを言います。背景に病気が隠れている場合もあれば、加齢や長時間の同じ姿勢によるものもあります。

むくみの治療

 では、むくみの治療にはどのようなものがあるのでしょうか?
背景に病気が隠れている場合はその治療が優先されます。原因が異なっても、むくんだ足に対する治療の考え方は同じです。基本的に崩れたバランスを元に戻してあげるということです。まず誰でも簡単にできる方法として就寝時の「下肢挙上法」があります。効果があり今日からでも出来るのでやってみて下さい。


下肢挙上法

 今回はさらに効果のある「圧迫療法」という治療法について説明したいと思います。
圧迫療法とは「弾性ストッキング」「弾性包帯」 を用いて、足先からふくらはぎにかけて圧迫し、静脈血を心臓へ戻しやすくする治療法です。足の静脈は、ふくらはぎの筋肉の働きにより心臓へ戻っていますが、皮下組織を圧迫することで、この作用を増強させます。

「弾性ストッキング」と「弾性包帯」にはそれぞれメリット・デメリットがあります。

〇弾性ストッキング (ここでは中圧ハイソックスタイプについて)
メリット :足の太さにより様々なサイズがある
      日常生活でずれないため、一定の圧が足にかかり続ける
デメリット:履くのが大変
      皮膚トラブル:痛くなる、しわができると食い込んで赤くなる、かゆくなる
              むれる
      値段が高い (4000円~6000円程度)

〇弾性包帯
メリット :どんな足の状態(むくみがかなり強い、皮膚潰瘍がある)でも装着できる
      比較的安価で購入できる (600円~1000円程度)
デメリット:巻くのに慣れが必要
      ずれやすい
      皮膚トラブル:痛くなる、しわができると食い込んで赤くなる

弾性包帯と普通の包帯との違い

 弾性包帯は町にある薬局では購入できません。もしみなさんが病院以外で購入されるとしたら通販での購入が可能です。 *「医療用 弾性包帯」で検索!

 弾性包帯と家庭にある包帯とは何が違うのでしょうか?
弾性包帯とは、たくさん種類のある包帯の中で弾性力が最も強い包帯です。弾性力とは、元に戻ろうとする力のことです。バネを引っ張ると伸びますが、必ず元に戻ろうとしますよね。弾性包帯もこの弾性力により足が圧迫される仕組みとなっています。ちなみに弾性ストッキングも同様の仕組みです。

家庭にある包帯は伸縮包帯といって、弾性力の弱い包帯なので残念ながら代用することはできません。

弾性包帯の巻き方

 先ほど説明した弾性包帯は、巻くのに慣れが必要となります。
まずは下記の動画をご覧ください。

 弾性包帯は、巻くときの引っぱり具合や重なり具合により、足にかかる圧が変わってきます。適切な引っぱり具合や重なり具合を感覚で習得するまでには、慣れが必要となります。
適切な圧迫はむくみの有効な治療となりますが、過度な圧迫は血流を悪くしてしまう原因となります。また、元々足の血流の弱い人は適切な圧迫であっても血流をさらに弱めてしまうためお勧めしません。弾性包帯を巻いてしびれや皮膚の色が悪くなった場合は、ただちに包帯をはずしてください。
適切な引っ張り具合を練習するために、印のついた弾性包帯もあります。

印のついた弾性包帯(二等辺三角形になるように伸ばす)

 むくみについては、自分だけで判断せず、まず病院での診察を受け、指導の元に圧迫療法を開始するようにしましょう。