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病気について

心臓手術って高いの?

2021年9月10日

医事課 高橋 直也

 新車のベンツが100万円と聞くと安く感じますよね。逆に携帯電話が100万円と聞くと高く感じますよね。モノにより価値が変わりますが、自分の心臓が100万円で治るとしたらみなさんはどのように感じますか?

国民皆保険制度をおさらい

 まず日本の保険制度がどうなっているか振り返ってみましょう。
日本では保険加入が義務であり、医療費は現役世代では3割負担、70歳以上の高齢者では1割や2割負担となっているのがほとんどです(下表参照)。アメリカでは無保険者も多く、病院が医療の価格を設定しているため所得により受けられる医療に格差があります。イギリスでは医療費は原則無料ですが、患者ごとに登録された医師に受診しないとならないため、1週間以上待たされることもあります。
 これらの国と比べて受診しやすく、平等に医療が受けられるのが日本の保険制度です。


年齢別の所得と医療費負担の割合

医療費には上限がある!

 入院や手術をし、自己負担額が100万円、200万円となっても心配ありません。
「高額療養費制度」(3割負担の患者さんが対象)を使えば、それぞれの収入に応じて1ヶ月の限度額が決められるため、病院でのお支払いが軽くなります(下表参照)。治療を受ける際はこの制度を活用するのをオススメします。
 *1ヶ月の限度額ですので、月をまたいだ会計となる場合はそれぞれの月で計算されますのでご注意ください。


所得と負担限度額

 当院では入院前に「患者サポートセンター」で高額療養費制度の申請方法を説明しているため、ほとんどの患者さんが手続きをし、退院時にはあらかじめ差し引かれた金額で会計されます。
 仮にこの制度を使わず、3割負担で支払われた方は、領収書を加入している保険者(会社では総務課など、また国民健康保険では役場)に申請すると、限度額より多く支払っていれば、その分は返金されますので、結果的に限度額分の支払いだけとなります。

手術っていくらするの?

 当院の心臓手術でも多く行われているのが、「弁置換術」と「冠動脈バイパス手術」です。
大まかに計算して「弁置換術」では400万円前後、「冠動脈バイパス手術」では300万円前後の医療費がかかります。高いですよね!これはもちろん全国共通の値段です。

 例えば「冠動脈バイパス手術」では約300万円のうち、自己負担3割の方なら約100万円の負担となります。しかし高額療養費制度を使い、世帯収入が210万円~600万円(上表の区分ウ)の方だと、「80100円+αと1食460円×食べた回数」になります。+αというのは、医療費総額のおおよそ1%分にあたり、1~4万円です。つまり合計すると10万~15万円程度の負担で心臓手術を受けられることになります。

70歳以上の方は手続きが楽

 実際に手術を多く受けられているのは70歳以上の方で、自己負担が1割か2割にあてはまる方がほとんどです。みなさん「高齢受給者証」をお持ちのため、この方々は「高額療養費制度」ではなく、あらかじめ限度額が決められています。限度額は「57600円と1食460円×食べた回数」で、10万円程度で心臓手術が受けられることになります。
 *70歳以上で現役並みの所得(3割負担)の方は「高額療養費制度」の使用になります。


所得区分(ウ)の支払い例

 患者それぞれの収入により多少の差はありますが、多くの方が治療費・ベッド代・食事代全て込みで10万円~15万円前後で心臓の手術を受けられることになります(区分アの上位所得の方は30万円前後)。
 また心臓手術以外では、当院で多くの患者さんが受けられる「下肢静脈瘤のレーザー治療」も同様の制度を利用して10万円前後となります。

カード・電子マネーももちろんOK

 会計は現金以外にもクレジットカード(VISAやJCB等)や電子マネー(ワオン・iD等)を利用することができます。どの支払い方法でも領収書は発行されますので、ご安心ください。

 制度を知ると、「手術はお金がかかる」というイメージが少し変わってきませんか?
これを機にみなさんが加入している保険証でどのような制度があるのか、どんな仕組みになっているのかを調べて、事前に知っておくことも大切ではないでしょうか。