音を使って身体をのぞく 「超・音・波」
臨床検査科 片岡榛香
みなさん、イルカが「超音波」を使って魚を捕まえることはご存じでしょうか。
イルカは暗い海の中でも、エサとなる魚を捕まえることができます。それはイルカが超音波を出し、魚に当たって戻ってきた音をキャッチしているからです。音が帰ってくる時間が長ければ、魚までの距離が遠いことになります。音、と言いましたがこの音は人間には聞こえません。このように人間には聞こえないほど高い周波数の音を「超音波」と言います。
イルカが使う超音波
超音波検査は「エコー検査」とも言い、イルカと同じ仕組みを用いています。超音波の伝わる速さは空気、脂肪、臓器(肝臓、腎臓など)、筋肉、骨などによって異なり、超音波がそれぞれの組織を通過する際、超音波の一部が反射します。この反射の強さや、反射が得られるまでの時間を計算して、結果を画面上に画像として描出することで、体の中の構造を知ることができます。
石も砕ける!
腎臓や胆嚢に出来た結石を細かく砕いて排出する超音波結石破砕という治療があります。え!超音波って石も砕けるの?皮膚や他の臓器は大丈夫?と思いますよね。大丈夫です。水中で発生させた「衝撃波」を体内の結石に当てると、水や体と結石の波の伝わり方が違うために衝撃波のエネルギーが集約して結石に吸収され、結石だけが取り除かれるという仕組みです。このとき超音波や放射線を用いて衝撃波の焦点を合わせます。治療中や検査中は技師の指示に従い、動かないようにして下さい。
血流をリアルタイムに描出
このように超音波は検査や治療に用いられています。しかし骨や空気はビームを反射し過ぎたり、吸収してしまうため、うまく像を作れないという欠点もあります。骨や空気の存在は確認できますが、その先や深部にある情報を得ることができないのです。骨より柔らかくてガスを含まないものと水、つまり臓器なら心臓、血管、肝臓、腎臓などはよく観察することができます。下のエコーは心臓血管外科 井上先生の心臓です。
また血管を超音波で検査するとき、脂肪が血管の壁に作った塊(プラーク)の厚さや、その形、また血流の速さ測定します。超音波には動いているものを、リアルタイムに描くことができるという利点があります。ホースの口を狭めると水が勢いよく出てくるように、血管が部分的に細くなると血流の速さも増します。医師は、どれくらい血流が速く、血管が細くなっているのか、という結果から治療が必要かを判断しています。心臓手術前には心臓超音波はもちろん、首の血管も検査して、脳梗塞などのリスクチェックを行っているのです。
これでみなさん超音波検査ってどんなもの?と聞かれたときに答えられるのではないでしょうか。イルカに超音波検査をしたら、彼らにはどのような「音」としてきこえているのか。私には新しい疑問が生まれてしまいました。