心臓の血管を診る
診療画像科 青木 哲也
寒い季節がやってきました。雪かきシーズンの到来です。
「雪かきをすると胸が痛くなる、少し休むと治るのだけど・・・」
そんな症状がある方は一度、循環器内科、心臓血管外科を受診してはいかがですか?
心臓の血管が狭くなっている可能性があります(ホームページの「対応疾患」:虚血性心疾患 参照)。
CTで簡単に心臓を調べられる
心臓の血管「冠動脈」をみるための検査は2種類あります。CT検査と血管造影検査です。
CTで心臓の血管をみる検査は「冠動脈CT検査」と呼ばれ、造影剤を点滴することにより、血管とそうでない組織を色分けしてはっきりと撮影します。CT検査は外来で受けることができ、検査時間も10分程度と短時間で行うことのできる検査です。造影剤を使うため点滴用の針を刺したり、心臓の血管を広げて見やすくするための苦い薬(ニトログリセリン)を舌裏にスプレーしたりしますが、それさえ我慢していただければ診断能力90%以上の検査です。検査時間10分で診断能力90%超は割と効率の良い検査ではないでしょうか?
冠動脈CTでは、動脈硬化によりカルシウムが沈着した部分や、血管の中が狭くなっているところを確認できます。また冠動脈バイパス手術をした後のバイパス血管の通りを確認できます。
脈拍は遅いほうがいい
しかし冠動脈CT検査にもデメリットが一つあります。ピンぼけです。みなさんの通常の脈拍は60回から90回程度ですが、この検査は心拍に合わせて細かく撮影していくため、脈拍は遅い方が良いのです。初めての検査に緊張はつきものですよね。ドキドキして脈拍が速くなると、いくら高性能CT装置でも(医療コラム:CTってすごい!参照)心臓の血管がブレて、しっかり撮影できなくなります。動いている被写体をカメラで撮ると、ピンぼけを起こしてしまう原理と同じです。ドキドキを沈めるお薬を使って検査しますが、それでも脈拍が速いままの方や、不整脈が多く出る方にはCT検査は診断能力を発揮できません。
より精密なのは血管造影
冠動脈CT検査は診断能力に優れていますが、あくまでスクリーニング検査です。CT検査をした結果、心臓の血管が細い可能性があると指摘されると、入院して精密検査を受けることになります。それが「血管造影検査」です。「心臓カテーテル検査」とも呼ばれており、手首や肘、足の付け根の動脈に細い管「カテーテル」を入れて、先端を直接心臓の血管までもっていき、造影剤を注入して撮影する検査です。この時の撮影法はレントゲン写真の連続撮影で、昔の白黒シネマを想像して下さい。動脈に管を入れるため、検査後にしっかり圧迫止血をしなければなりません。安静保持はもちろん、もともと「血サラサラ薬」を飲んでいる方も多く、出血のリスクを回避するためや、検査後に症状が出ないかを確認するために入院を必要とする検査です。
血管造影はそのまま治療も可能
心臓カテーテル検査は、医師が画像のモニターを見ながら造影剤を注入し動画撮影をするため、脈拍が速くても、不整脈が出ても検査ができます。さらに検査からそのまま治療に移行することもできます。細くなった血管の部分を風船で広げ、ステントと呼ばれる金属製の筒を置いて、血管の広がりを保ちます。
CT検査、血管造影検査ともに放射線を使った検査のため、医療被曝の許容範囲内ではありますが、少量の放射線を浴びます。撮影は必ず診療放射線技師が行っています。
また腎臓の機能が低下していると、おしっこから排泄される造影剤は使いにくいため、造影検査の前に採血で腎臓の機能チェックが必要になります。
2021年秋に医師兼放射線技師が主人公のドラマ、「ラジエーションハウス」が放送されていました。あそこまでイケメンな放射線技師は見たことないぞ!と心でつぶやきながら、実際にいたら患者さんも検査受けに来るのが楽しみになるだろうな・・・と考えてしまう今日この頃です。