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病気について

おしっこの話

2021年8月20日

臨床工学科 土屋侑生

成人は1日に約1.5Lのおしっこしています。500mlのペットボトルで3本分もおしっこしているなんて本当かな、と疑問になりますが本当です。このおしっこをするためには「腎臓」と「膀胱」という臓器が関わっているのですが、これらの役割の違いについて知っていますか? 私の祖父に聞いてみると、おしっこは膀胱で作られると思っていました。腎臓は血液からおしっこを作りだし、膀胱はおしっこをためておく場所なのです。今回はおしっこを作る腎臓が悪くなった時の話をします。

さてそもそも「おしっこ」とは何でしょうか? おしっこは血液中に含まれている毒素や余分な水分のことです。毒素とは「尿素窒素やクレアチニン、アンモニア」などのことで、水分が90%以上を占めます。腎臓の働きが悪くなると、おしっこの量が減り、体に毒素と水分がたまります。その結果、むくみや高血圧、食欲不振、貧血、意識障害などといった症状が出てきます。またおしっこで排出されるカリウムが体に極端に溜まると、最終的には心臓が止まってしまいます。最初は薬で対処しますが、それでもおしっこが出なくなった場合・・・、ここで登場するのがおしっこ製造器その名も『透析装置 ダイアライザー!』。戦隊ヒーローの名前みたいですね。

『ダイアライザー』は穴あきストロー

ダイアライザーとは簡単に説明すると、「ろ過器」のことです。身近にある、ろ過器といえば家庭の水道に付いている浄水器ですね。浄水器の中の「ろ過フィルター」を水道水が通ることで、キレイでおいしい水が作られます。ダイアライザーも浄水器のように、血液をキレイにします。浄水器やダイアライザーに使われているフィルターは「中空糸フィルター」と呼ばれるものです。中空糸とは「細いストローに小さな穴が開いた」形状をしていて、そのストローに水や血液を通すと、開いている小さな穴から不純物や毒素が取り除かれてキレイになります。ダイアライザーの中にはその中空糸がなんと1万本も並んでいるのです。

ダイアライザーで透析

このおしっこ製造器「ダイアライザー」を用いて、おしっこが出ない代わりに、汚い血液を体から機械に移し、キレイにして体へ返すことを「血液透析」と言います。透析は一般的に1回4時間行い、それを週3回行う必要があります。

点滴や採血をする「静脈」に針を刺しただけでは、透析で必要な血液量としては不十分です。短時間で透析を行うために、たくさんの血液を機械に送る必要があるからです。ここで必要になるのが血液の短絡(たんらく)である「シャント」です。聞きなじみのないものですよね。意味は「血液の近道」です。

血液透析の機械

「シャント」の作成

「動脈」という血管には、心臓から勢いよく血液が流れています。また静脈という血管には字の如く、ゆっくりと血液が流れて心臓に戻っていきます。静脈は浅いところにネットワークを作って存在します。動脈に太い針を直接刺すことができれば、多くの血液を確保できますが、動脈は深いところにあり、なかなか刺すのが難しく、また止血も時間がかかります。そこで手術で、動脈に1本の静脈をつなぐと、その静脈だけが血液の流れが豊富になるため、そこを針で刺すことで十分な血液を確保できます。これが「シャント」と呼ばれる血管です。当院では心臓血管外科でシャント手術を行っています。



シャントを使用した血液透析


シャントの仕組み

充実したベッドとスタッフ

シャントをしっかり管理するため、当院の透析室では穿刺時に毎回視診、聴診、触診をしています。またエコー検査で、シャントが狭くなっていないかを定期的に確認しています。透析で使用する針は、採血で使用する針よりも太いため、痛みを強く感じる患者さんには、透析前に局所麻酔作用のあるテープを貼り、穿刺の痛みを和らげています。

現在当院の透析ベッド数は21床あり、外来通院透析だけでなく、入院や緊急で透析を必要とする患者さんにも対応しています。安心して透析を受けて頂けるよう、透析技術認定士の資格を有する3名のスタッフに加え、臨床工学士11名が透析室で働いています。

おしっこの仕組みがわかってくると、ふだん何気なく出しているおしっこにも少し興味がわきませんか?