(1)<変形性膝関節症>
膝関節
膝関節痛の原因として最も多いのが、変形性膝関節症です。これは、主として、加齢に伴う変性により、関節表面のクッションである軟骨や半月板がすり減って、痛みを生じます。損傷がすすむと骨も変形し、O脚などの下肢変形をきたし、痛みの増悪、関節可動域の制限、歩行困難となっていきます。治療は軽症であれば、薬物療法(関節内注射も含む)・リハビリテーション・装具療法などの保存的治療を行います。保存的治療で改善されない場合や中等度以上の変形の方に対して、各種の手術的治療が行われます。基本的に病期に応じて治療していきます。
変形性膝関節症の病期分類
保存的治療
Stage Ⅰの方が主な対象
薬物療法(関節内注射も含む)・リハビリテーション・装具療法など
関節鏡視下手術
関節鏡視下手術
Stage Ⅱ-Ⅲの方が主な対象
膝蓋骨(おさら)の周囲に1cm 弱の小切開を2-3カ所あけて、径5mm程度の関節鏡を関節内に挿入して治療します。痛みの原因となる変性した半月板や軟骨、滑膜の処置を行い、関節内をきれいにします。創が小さく、術後の痛みも少なく、低侵襲の手術です。入院期間は数日から1週間程度です。
骨切り術
Stage Ⅲ-Ⅳ で骨質がしっかりしていて、重労働従事者などが主な対象
O脚(内反)変形により内側に集中する荷重を外側に移動させる手術です。 脛骨の近位部を骨切りして、矯正固定します。入院期間は約3-4週間程度です。
人工関節置換術
Stage Ⅳ~Ⅴ の方が主な対象
ほとんどの方が内側の軟骨が消失し、大腿骨と脛骨が接触して痛みを生じます。
外側も程度の差はありますが、すり減っています。
例えて言えば、膝の内側は軟骨・半月板がすり減ったひどい”虫歯”だと考えるとわかりやすいです。この状態で歩くことは、ひどい虫歯で物をかむようなもので、痛みで思うようには歩けないのです。
治療法は歯と同じで、虫歯のひどいところを削ったり、抜いて、差し歯・入れ歯にするように、膝関節面の悪いところを削って、人工関節という膝としての差し歯をはめ込みます(①人工関節全置換術)。外側がほぼ正常に近く保たれ、関節の動きが良好であれば、症例によっては、関節の内側のみを人工関節にすることもできます(②人工関節片側置換術)。
片側置換術は全置換術に比べ、手術侵襲が少ないため、術後の痛みも少なく回復も早いと言われています。
大腿骨側は元の形状に合うように、丸みのある金属コンポーネントに置換します。
脛骨側はなめらかで平らなコンポーネントに置換し、その間にプラスチックのクッション(生体では軟骨・半月板に相当)をはめ込んで完成します。
手術創部について
手術創は、皮膚の下をしっかり縫合して、表面をテープでとめるだけです。いわゆる抜糸は必要なく、テープをはがすだけなので、痛みなく創処置は終了し、整容的にも優れています。以前は、創表面を糸で縫ったり、皮膚用のホッチキスでとめて、約2週間後にいわゆる抜糸・抜鉤を行っていました。抜糸・抜鉤はかなりの痛みを伴い、除去後も皮膚にかなりの跡が残りました。
術後経過について
術後24~48時間は、痛みと腫張の軽減を第一として、手術創部を冷却装置(アイシングシステム)を用いて安静・冷却します。
この期間は足関節・足指、および伸展位での患肢の挙上運動を中心とした筋力訓練を行います。
その後、皆さんの状態に合わせて、可及的早期より荷重歩行訓練・可動域訓練・筋力訓練を行っていきます。創部はほぼ2週間でフリーとなり、リハビリに専念していきます。退院は約3-4週間後を目標とします。
LISとは、筋肉や軟部組織に対する負担をできるだけ最小限に行う手術方法です。
皮切の長さや関節内の処置は、体格や骨の大きさで異なりますので、一概に数値で比較するのは困難です。
したがって、患者さんそれぞれの膝に応じて、できるだけ最小限の侵襲を目標に手術します。LISの手術を行うことで、痛みを軽減し、術後リハビリを早期に開始することで、早期の社会復帰を目指します。