(1)<変形性股関節症>
変形性股関節症
股関節に生じる変形性関節症です。加齢に伴う変性により、関節表面のクッションである軟骨と骨がすり減って、痛みを生じます。
損傷がすすむと骨も変形し、つぶれていき、痛みの増悪、関節可動域の制限、下肢長の短縮、歩行困難となっていきます。
変形性股関節症は生まれつきの骨格の発育不全(先天性臼蓋形成不全・先天性股関節脱臼)
の患者さんに多くみられます。肥満や外傷、重労働などが増悪因子となり、発症ます。
膝同様、“虫歯”をイメージしていただくとわかりやすいでしょう。軟骨がすり減り、消失した部分はひどい虫歯の状態であり、歩くたびに虫歯で物をかみしめているような状態です。
病期や年齢に応じて、適切な治療を行います。
治療法
年齢や骨格の変形の程度で異なります。
骨切り術
臼蓋回転骨切り術
年齢的には30-50歳台で、骨の変形が軽い場合に適応となります。
健常な部分の骨を最大限に機能させるために、骨を切って向きを変えて、固定する方法です。
人工関節置換術
骨の変形が強く、機能障害が強い場合に適応となります。
ひどい虫歯に対して、差し歯に代えるイメージです。著明に変形した大腿骨頭を切除し、臼蓋の表面を削り、なめらかな金属に置き換えます。
金属間には、軟骨に相当するプラスチックのクッションが介在します。
手術創部について
手術創は、皮膚の下をしっかり縫合して、表面をテープでとめるだけです。いわゆる抜糸は必要なく、テープをはがすだけなので、痛みなく創処置は終了し、整容的にも優れています。以前は、創表面を糸で縫ったり、皮膚用のホッチキスでとめて、約2週間後にいわゆる抜糸・抜鉤を行っていました。抜糸・抜鉤はかなりの痛みを伴い、除去後も皮膚にかなりの跡が残りました。
術後経過について
術直後から術後2日目までは、痛みと腫張の軽減を第一として、手術創部を冷却装置(アイシングシステム)を用いて安静・冷却します。
この期間は足関節・足指、および伸展位での患肢の挙上運動を中心とした筋力訓練を行います。
その後、皆さんの状態に合わせて、可及的早期より荷重歩行訓練・可動域訓練・筋力訓練を行っていきます。創部はほぼ2週間でフリーとなり、リハビリに専念していきます。退院は約3-4週間後を目標とします。
LISとは、筋肉や軟部組織に対する負担をできるだけ最小限に行う手術方法です。 皮切の長さや関節内の処置は、体格や骨の大きさで異なりますので、一概に数値で比較するのは困難です。したがって、患者さんそれぞれに応じて、できるだけ最小限の侵襲を目標に手術します。LISの手術を行うことで、痛みを軽減し、術後リハビリを早期に開始することで、早期の社会復帰を目指します。