アレルギー性鼻炎(びえん)
耳鼻咽喉科・頭頸部外科では、手術療法を含めたアレルギー性鼻炎の総合的な診療をおこなっています。
■アレルギー性鼻炎はどんな症状が出るのでしょう?
何と言っても「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」です。ただしカゼと違い、熱は出ません。また鼻づまりが原因で「頭が重い感じ」や「においが分かりにくい」こともあります。目の症状として「涙が出る」「目のかゆみ」がおきます。
■アレルギー性鼻炎は2つに分けられます
2008年の調査ではアレルギー性鼻炎全体の有病率(アレルギー性鼻炎と診断された人の割合)は39.4パーセントと5人に2人はアレルギー性鼻炎と診断されていることになり、今や国民病となっています。
ある時期だけ症状がみられる季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の有病率は29.8パーセント、一年中症状がみられ、ダニやハウスダスト(家のホコリ)などが原因となる通年性アレルギー性鼻炎の有病率は23.4パーセントと報告されています。
■アレルギー性鼻炎の起こり方をくわしく教えてください
アレルギー性鼻炎発症のメカニズム
鼻には空気と一緒にいろいろな物質が入ってきます。アレルギーを起こす物質であるアレルゲン(抗原)が鼻の粘膜にくっつくと、肥満細胞と呼ばれる細胞に乗っているIgE抗体は、アレルゲンを捕まえます。このときに肥満細胞から、ヒスタミンなどの多くの化学物質が放出されます。ヒスタミンは鼻粘膜の知覚神経を刺激してくしゃみを出させたり、鼻水を作る腺細胞を刺激して鼻水を出させたりします。また鼻粘膜の毛細血管を広げて充血させ、鼻づまりを起こします。
■原因物質(アレルゲン)にはどのようなものがありますか?
1. 花粉症
白樺(シラカンバ)は白い樹皮が美しく、帯広でも街路樹としても植えられていて、公園でも多く見かけます。春のゴールデンウイーク頃に花を咲かせ、大量の花粉を飛ばします。患者様は毎年4月の中旬から6月中旬まで花粉症の症状に悩まされます。また、3月下旬から飛散するハンノキ花粉症と合併することも多く、口腔アレルギー症候群(リンゴ、モモ、メロン)を伴うこともあります。
道端でよく見られる雑草です。もともとは牧草で明治時代にアメリカから北海道の酪農のために持ち込まれたものです。カモガヤ花粉症の患者様はカモガヤだけでなく、他のイネ科の植物の花粉でも花粉症を起こします。オオアワガエリ、ナガハグサ、ハルガヤ、スズメノテッポウなどはみなイネ科の植物で、このすべての花粉が患者様を苦しめます。花粉は6月中旬から9月中旬くらいまで飛散します。むかし夏風邪と呼ばれていた病気はほとんどがこのイネ科の花粉症です。
カモガヤ
オオアワガエリ
ヨモギ
「よもぎもち」のヨモギです。北海道のヨモギは正式にはオオヨモギ、あるいはエゾヨモギと呼ばれている種類です。8月中旬から9月中旬まで花粉を飛ばします。
2. 通年性アレルギー性鼻炎
ダニやダニの分泌物やほこりなどが合わさったハウスダストがアレルゲンとして最も多くみられます。ダニは主としてじゅうたんや畳に寄生しており、高温多湿の状態で繁殖します。
繁殖を防ぐためには、室内の温度を25度以下に湿度を60パーセント以下に保つことがよいとされていますが、基本は頻回な掃除でハウスダストの量を減らすことが重要です。
コナヒョウダニ
ペット
ネコやイヌの毛やふけが原因になることもあります。最近ハムスターのアレルギー性鼻炎が増えています。
■耳鼻科に行ったらどのような検査をするのですか?
1. まず鼻の中を見て鼻粘膜の腫れ具合、色調、また透明の鼻水がたまっているか診察します。
2. 鼻水の中にアレルギーの細胞(好酸球)があるか顕微鏡で調べます。
3. レントゲン写真を撮って副鼻腔炎(蓄膿症)がないか調べます。
4. 血液検査でアレルギーの原因物質(アレルゲン)に対する抗体(IgE)の有無を調べます。RAST(ラスト)といわれる検査です。血液検査でアレルゲンを調べることが重要です。
■鼻の中はどうなるのですか?
鼻の中が腫れる様子
鼻の中が腫れる様子です。鼻の中(鼻腔)には左右の鼻の間のしきり(鼻中隔)と外側から骨のでっぱり(下鼻甲介)があります。アレルギー性鼻炎の場合、おもに下鼻甲介の粘膜が大きく腫れて、鼻がつまる原因となります。
■アレルギー性鼻炎のクスリはどのようなものがあるのですか?
1. 抗ヒスタミン剤
このクスリは即効性があり、くしゃみ、鼻水を押さえる薬といえます。その症状を押さえる効果は、抗アレルギー剤より高い場合があります。ただし抗ヒスタミン剤は、眠気とのどの乾燥が起こりやすく、長期間継続的に内服する場合は抗アレルギー薬の方がいいようです。抗ヒスタミン剤は医師の処方で使われるだけでなく、ほとんどの市販薬に少量含まれています。
2. 抗アレルギー剤
このクスリは眠気が少なく、くしゃみ、鼻水、鼻づまりに効きます。現在多くの種類があり、最も多く使用されています。有効性には個人差があるので現在もらっているクスリが効かない、または合わない場合は医師に相談してください。
3. ステロイド点鼻薬
鼻粘膜の腫れを抑え、くしゃみ、鼻水、鼻づまりに優れた効果を示します。効果も比較的早く現れますので、抗アレルギー剤の経口薬と併用することで症状はかなり抑えられます。ステロイドの内服とは違い、鼻内噴霧で体内にほとんど吸収されないので、副作用もほとんど問題ありません。
■内服薬はいつからいつまで飲んだらよいのでしょうか?
花粉症の場合は本格飛散がはじまる2週間前から内服をはじめるのが効果的です。抗アレルギー剤は予防効果が期待でき、花粉飛散シーズンの間、症状が軽くすむといわれています。また途中で中断せずに花粉飛散が少なくなる時期まで継続してください。よってシラカンバ花粉症の患者様は4月下旬から6月上旬まで花粉が飛散するので、雪がとける頃の4月中旬から6月までクスリを服用するのが効果的です。
ダニやハウスダストなどの通年性アレルギー性鼻炎の患者様は1年中クスリを飲み続けることになりますが、症状に合わせてクスリを飲む回数を減らしてもかまいません。
■クスリ以外の治療法はあるのですか?
クスリが効かない患者様に対して下記の手術療法をおこないます。
1. レーザー手術
レーザーで鼻の腫れた粘膜を蒸散する治療法です。局所麻酔でおこなう日帰り手術です。
希望される方はまず、北斗クリニックを受診していただき、手術日を決めていただきます。手術当日は鼻にガーゼをつめて鼻の中を麻酔します。その後、手術室で「アルゴンプラズマレーザー」という器械を使って治療します。手術時間は左右合わせて15分ほどです。手術のあと数日間は鼻がつまりますが、その後徐々に鼻の通りがよくなってきます。
症状の改善がみられない場合、繰り返しおこなうこともあります。
2. 下甲介切除術、鼻中隔矯正術
鼻づまりが高度の場合、また鼻中隔彎曲症など鼻の中の形がもともと狭い場合、腫れている鼻粘膜を切除したり、曲がった鼻中隔をまっすぐにする手術をおこないます。約1週間程度の入院が必要で、手術は全身麻酔で約1時間です。退院したあともカサブタを取ったりする鼻の掃除のため通院する必要があります。手術のあと鼻の中が落ち着けば、鼻が通るようになり、すっきりします。
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